2015年1月1日木曜日

戦記5巻p88〜 真相

 あけましておめでとうございます。今年もWoDをよろしくお願いします。

DRAGONS OF SPRING DAWNING p46

--Raistlin’s voice was calm--“or at least I thought it was Caramon.”

“As it turned out, it was an illusion created to teach me the depth of my hatred and jealousy.”

戦記5巻p88

――レイストリンの声は穏やかだった――「いや、少なくとも、ぼくはそれがキャラモンだと思っていた」
「あとでわかってみると、それはただの幻影で、ぼくに自分の憎悪感や嫉妬心の深さを学ばせるために作られたものだった」

“Thus they thought to purge my soul of darkness. What I truly learned was that I lacked self-control. Still, since it was not part of the true Test, my failure did not count against me--except with one person.”

「それによって、審問官たちは、ぼくの心に巣食う闇を浄化しようと考えたわけだ。しかし、ぼくが本当に学んだのは、自分に自制心が欠けているということだった。とはいえ、その試練は<大審問>の一部ではなかったため、ぼくの失敗は汚点とはみなされなかった――たった一人を除いてね」

***

 審問官たち、その筆頭たる大パー=サリアン。あなたは間違っていたと思います。人の心を遠慮なく暴き立てて、闇を、憎悪を、嫉妬を”purge”する?そんなの、腹をかっ捌いて臓器を切り取ろうとするようなものではないですか。それも麻酔もなしに。

 まだ竜槍病が再燃する前、あるゲームで、こんな事情で闇堕ちしてしまった魔術師が出てきたんです。 

「(ネタバレな事情により)
他人に殺されるくらいならと、ひと思いに俺が殺った……。

兄殺しの大罪を背負ったからには、どんなことでもできる!
どんな罪をも恐れず犯し、力を身につけて……
(ネタバレ)に復讐すると心に誓ったッ……!」

 想いはまったく異なるとは言え、即座にかれが想起されました。

 心の闇をpurgeするどころか、むしろそれこそが、レイストリンの心を闇路に押しやったのではありませんか?かの魔術師と同様に。そのことが、キャラモンよりもレイストリンをこそどれほど深く傷つけ、自分自身に絶望させたことか。

 黒エルフとの戦いで、心身ともに極限まで追いつめられていたレイストリンの真の力を引き出し、歩むべき道を見いださせたかったと本当に思っていたのなら、見せるべきはキャラモンの幻影ではなかった筈です。


 何か小さく、弱くて、惨めな存在が、強者に虐げられる様を見せれば良かったんです。


 読者様、どう思われますか?
 もしそうであったとしたら、レイストリンはどうしていたと思いますか?

 パー=サリアン、あなたはレイストリン・マジェーレという若者を見誤っていました。



“I watched him kill me!”
“They made me watch so that I would understand him!”

「おれは、こいつがおれを殺すのを見ていた!」
「審問官たちは、おれがこいつを理解するようにと、おれに見させたんだ!」

“I do understand!”
“I understood then! I’m sorry! Just don’t go without me, Raist! You’re so weak! You need me--“

“No longer, Caramon,” Raistlin whispered with a soft sigh. “I need you no longer!”

「おれは理解しているとも!」
「あのとき理解したんだ。しなけりゃよかった!だから、頼む、おれを置いて一人で行くな、レイスト!おまえはそんなに弱いのに。おまえにはおれが必要だ――」

「もうちがうよ、キャラモン」レイストリンがそっとため息まじりにささやいた。「ぼくにはもう兄さんは必要ないんだ!」

***

 伝説1巻の、ブープーがパー=サリアンに啖呵切るシーンで語ろうと思っていた話、我慢できずにここでぶちまけちゃいました。私にも自制心が欠けているようです。

2 件のコメント:

  1. あけましておめでとうございます。
    レイストリンは真っ先に助けに行っていたでしょう。例え幻影だと分かっていたとしても、弱くてみじめな者が強者に虐げる様子を見ればそうせずにはいられなかったはず。
    パー=サリアンに限ったことではありませんが、己について学ばせるならば心の闇を"purge"するのではなく"deal"する方法を教えるべきだったのでは。そう私は感じました。

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  2. あけましておめでとうございます。

    "purge"ではなく"deal"。まさしくその通りだと思います。タニスはなんとかそれをやってのけましたね。さすが主人公。

    パー=サリアンは結局は一人の魔導士、一個の人間だったのだなあと、後のキャラモンの回想シーンで思いました。あれは計画的ではなく、突発的な犯行にすぎなかったのでしょうか。

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