“It’s Berem!”
“And he’s doing something to Flint! Hurry, Tanis!”
His eyes were on the two in front of him and now he could see them clearly. Even as he watched, he saw the dwarf fall to the ground. Berem stood over him.
戦記6巻p60
「ベレムだ!」
「フリントに何かしてる!タニス、急いで!」
二人の姿は今でははっきりとわかる。そして、かれの見ている前で、フリントが地面に倒れた。ベレムがかぶさるように立っている。
“What have you done?”
“You’ve killed him!” Grief, guilt, despair, and rage exploded within Tanis like one of the old mage’s fireballs, flooding his head with unbearable pain. He could not see, a red tide blurred his sight.
「いったいなにをした?」
「この人殺しめ!」悲嘆と自責、絶望と怒りが、タニスの内部でまるで老魔術師の<火の球>のように炸裂し、耐えがたい痛みで脳裏を満たした。かれはもはや眼が見えず、真っ赤な潮が視野を滲ませていた。
His touch was like cool water to a fevered man. Tanis felt reason return. The bloody haze cleared from his vision. He dropped the blood-stained sword from his red hands and collapsed, sobbing, at Fizban’s feet.
その手は、熱病にかかったものへの一服の清涼剤のようだった。タニスは理性が戻るのを感じた。視野にかかっていた鮮紅色のもやが晴れた。かれは血まみれの剣を赤く染まった両手から取り落とし、すすり泣きながらフィズバンの足下にくずおれた。
“Be strong, Tanis,” he said softly, “for you must say good-bye to one who has a long journey before him.”
「しっかりおし、タニス」老人はそっと言った。「長い旅を控えているひとにお訣れを言わねばな」
“Then he didn’t--he didn’t--harm you…”
“Harm me! He couldn’t harm a mouse, Tanis. He’s as gentle as Tika.”
“You take care of that big oaf, Caramon, you hear?”
“See he comes in out of the rain.”
「では、ベレムは――ベレムは――あんたを傷つけたのではないのか……」
「わしを傷つける、じゃと?あいつはネズミ一匹傷つけられんさ、タニス。かれはティカと同じくらい優しいやつじゃ」
「おまえさんはあのでっかい鈍牛――キャラモンの面倒をみてやってくれ、いいな?」
「あいつが雨に打たれんようにな」
“At least you won’t be trying to drown me anymore,” the dwarf grumbled, his eyes resting fondly on Caramon. “And if you see that brother of yours, give him a kick in the robes for me.”
「少なくとも、わしを溺れさせようとしてももう無理だぞ」<老ドワーフ>はぶつぶつと言いながら、愛しそうにキャラモンを眺めた。「それから、もしあの弟に会ったら、わしの代わりにあの子のローブに一蹴りくらわしてやってくれ」
***
先日「時の瞳もつ魔術師の竜」を読み終えたばかりなんですが、このときレイストリンが姿を隠してここにいて、フリントの苦痛を和らげる薬を飲ませ、最期まで看取っていた、というエピソードにはじわりと来ました。一方で、パランサスで二人が会っていた、という話はしっくり来ませんでした。もし会っていたとするなら、「もしあの弟に会ったら」という言葉の重みが違ってきてしまうと思うのです。
「わしの代わりにあの子のローブに一蹴りくらわしてやってくれ」
嫌い抜いてる相手のことを「あの子」なんて言いませんよね。「ローブに一蹴り」って愛情表現ですよね。かれのことだって、幼い頃から見守ってきたんですから。
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