2015年1月27日火曜日

戦記6巻p118〜「かれの愛など欲しくもない」

DRAGONS OF SPRING DAWNING p278

“You have not forgotten our bargain?”

戦記6巻p118

「わたしとの取り引きを忘れたわけではあるまいな?」

“The elfwoman will be yours when the Queen has finished with her, of course.”
“Of course. I would not want her otherwise. A living woman is of no use for me, not like a living man is of use to you….” The dark figure’s voice lingered unpleasantly over the words.

「あのエルフ女は其方にやるとも――もちろん、女王のご用済みとなったあとでな」
「当然だ。それでなくては。生身の女はわたしには無用の長物だ――そなたが生身の男を重宝するのとは違う……」黒い人影の声は不快に空中に漂っていた。

“Don’t be a fool, Soth,”
“I am able to separate the pleasures of the flesh from the pleasures of business--something you were unable to do, from what I know of your life.”

「馬鹿を言わないでおくれ、ソス」
「わたしは私的な愉しみと公務の愉しみを分けることくらいできる――そなたにはできなかったらしいがな、わたしの聞き及ぶところによれば」

***

“pleasures of the flesh”って、そこまで露骨に言いますか。


“Then what are you plans for the half-elf?”
“He will be mine, utterly and completely,”

「では、あのハーフ・エルフをどうするつもりなのだ?」
「かれはわたしのものになるのだ、余すところなく完全に」

“The only way to possess the half-elf is to make him watch as I destroy Laurana,”
“That is hardly the way to win his love,”

「かれをわがものにする唯一の方法は、わたしがローラナを破滅させるところを目の当たりに見せることだ」
「それではかれの愛を勝ち得るのは難しかろう」

“I don’t want his love,” Pulling off her gloves and unbuckling her armor, Kitiara laughed shortly. “I want him! As long as she lives, his thoughts will be of her and of the noble sacrifice he has made.”

「かれの愛など欲しくもない」手袋を脱ぎ、鎧をはずしながら、キティアラは短く笑った。「わたしが欲しいのはかれだ!ローラナがこの世にある限り、かれの念頭からは彼女のこと、彼女のために自分が捧げた尊い犠牲のことが離れないだろう」

“No, the only way he will be mine--totally--is to be ground beneath the heel of my boot until he is nothing more than a shapeless mass. Then, he will be of use to me.”

「違うのだよ、かれが――完全に――わがものになる唯一の方法は、わたしのブーツの踵に踏みにじられ、醜いただの固まりにすぎなくなったときだけなのだ。そのときこそ、かれはわたしにとって有用となるのだ」

“Not for long,”
“Death will flee him”

「それとて、長いことではあるまい」
「死がかれを解放しよう」
 
“He has lied to me,”
“He has lied. My brothers did not die in the Blood Sea--at least one of them leaved, I know.”

「かれはわたしに嘘をついている」
「かれは嘘をついている。わたしの弟たちは<鮮血海>で死んではいない――少なくとも、一人は生きているのがわかっている」

The spectral knight stood beside the dragonhelm that lay on the table amidst pieces of the broken vase. With a wave of his fleshless hand, Lord Soth caused the shattered remains of the vase to rise into the air and hover before him. Holding them by the force of his magic, the death knight turned to regard Kitiara with his flaming orange eyes as she stood naked before him. The firelight turned her tanned skin golden, made her dark hair shine with warmth.

 亡霊の騎士は小卓のそばに立ち、花瓶の残骸の真ん中にころがっている竜兜を見ていた。肉のない手を一振りして、ソス卿は花瓶の破片を自分の目の前の宙に浮かせた。魔術の力でそれを浮かせたまま、かれは橙色に燃える眼で、素肌で眼前に立っているキティアラを眺めた。炉の明かりが当たって、彼女の日に焼けた肌が金色に染まり、漆黒の髪が熱っぽく光って見える。

***

 竜兜、砕けた花瓶の破片、炎に照らし出される素肌のキティアラ…もはや生身の女を欲しないソス卿にしか、彼女の本質を見ることができないとは。


“You are a woman still, Kitiara.” Lord Soth said softly. ”You love…”

「そなたはやはり女だ、キティアラ」ソス卿はゆっくりと言った。「まだ愛しているのだ……」

“And you hurt,” he said softly to Kitiara as he drew near her. “Do not deceive yourself, Dark Lady. Crush him you as you will, the half-elf will always be your master--even in death.”

「そして傷ついたのだ」かれは低く言いながら彼女に近づいた。「自分を偽るものではない、<暗黒の女卿>よ。いくら押しつぶそうとも、あのハーフ・エルフは常にそなたの主なのだ――たとえ死してもな」

Lord Soth melded with the shadows of the room. Kitiara stood for long moments, staring into the blazing fire, seeking, perhaps, to read her fortune in the flames.

 ソス卿は室内の闇に溶け込んだ。キティアラは長い間立ちつくしたまま、燃えさかる火を見つめていた――まるで自分の運命を読み取ろうとするように。

***

 あああもうこのシーンのキティアラ様は痛々しくて仕方がないです。ソス卿が生身の男性だったら良かったのにとさえ思っちゃいますよ。タニスなんて放っといて。

 ここでタニスを罵り始めると、本文の長さを超える勢いになってしまうので我慢。中断してる二次創作に全てぶつけます。「戦記」が終わった段階で原文紹介はしばらくお休みして、二次創作を完成させて、それから「伝説」に入ろうと思ってます。

「書く書く詐欺」にならないように、ここで逃げ場を断っておきます。

『パヴァーヌ――ドラゴンランス舞曲』

 性別逆転ものです。流されるハーフ・エルフの乙女タニスちゃん、世間知らずの王子から黄金の将軍へと成長を遂げるローラナス、そしてドラゴン卿キタリオンの物語です。そして双子の姉妹、キャランちゃんとレイストちゃん。他のメインキャラの性別はそのままです。予定の八割ぐらいは書けてるんですが、書いていくうちにどんどん長くなるのは仕様なので、たぶんまだ完成品の半分くらいにしかなってないでしょう。

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