“Gully dwarves aren’t evil, not like goblins at any rate. What could they be doing living with draconians?”
“Slaves,” Raistlin interrupted.
戦記1巻p334
「どぶドワーフは悪漢ではない――ともかくゴブリンのような悪漢ではない。なぜやつらはここでドラコニアンと共棲していられるのだ?」
「奴隷ですよ」レイストリンが冷ややかに答えた。
***
“evil”はここでは悪漢ですか。ゴブリンはevilですか。作品とか世界観によっては、種族そのものが善や悪と定義されていて割り切れないものを感じます。悪鬼に生まれつくことは悪ですか?もちろん、自分の意思でそれを克服する存在も登場したりはするのですが…。
「冷ややかに」とは原文になく、邦訳で付け加えられている表現ですが、これはどぶドワーフではなく、彼らを隷属させているドラコニアンに向けられた冷ややかさなんでしょうね。
“Leave this to me,” Raistlin whispered.
“We had better come with you,” Sturm stated, “to cover you, of course.”
“Of course,” Raistlin sniffed. “Very well, but do not disturb me.”
「これはぼくにまかせてください」レイストリンはささやいた。
「わたしたちも同行したほうがよかろう」と、スタームが言った。「もちろん、君の援護のためだよ」
「本当に?」と、レイストリンは鼻であしらった。「それはどうも。でもぼくの邪魔はしないでください」
“They are now spellbound,” Raistlin replied. “I have cast over them a spell of friendship.”
「呪文をかけたのです」レイストリンが答える。「友情を結ぶ呪文をかけました」
Sturm glanced at Tanis in alarm. Tanis knew what the knight was thinking. Raistlin could have cast that spell on any of them at any time.
スタームが驚きの目をタニスに走らせた。タニスには騎士の考えていることがわかった。レイストリンは一行の誰にでも、好きなときにあの呪文をかけることができたのだ。
“Yes,” Raistlin said in a soft and gentle voice, so smooth and winning that Tanis was momentarily taken aback.
「そうだよ」レイストリンが優しく穏やかに言った。その口調があまりにもなめらかで愛想よかったので、タニスは一瞬面くらった。
But she seemed to be a leader among the gully dwarves, for they all eyed her with respect. This may have been because she carried a huge, heavy bag slung over one shoulder.
しかし、彼女はどぶドワーフの指導者格であるらしく、一同から尊敬のまなざしを受けていた。これはおそらく、肩からかけた重たげな大きい袋のせいかもしれない。
“Corridor lead to big bosses,” she said, nodding her head toward the east.
「ろうか、おっきいボスたちのとこ、いく」彼女は東のほうに頭を振った。
“What is your name, little one?” he asked.
“Bupu.”
「おちびさん、君の名前は?」
「ブープー」
***
ブープー登場であります。ドラえもんのポケット並みになんでも出てくる不思議な袋、持ってます。
“Oh, me not know that,” Bupu shook her head. Then, seeing disappointment on Raistlin’s face, she clutched his hand.
「ああ、おら、それしらない」ブープーはかぶりを振った。しかし、レイストリンの顔に失望が浮かんだのを見て、かれの手を握る。
“I not let bosses get you. You pretty.”
「おら、ボスたちにあなた、わたさない。あなた、かわい」
“Magic,” she said shyly and she held out her hand. Lying in the gully dwarf’s grubby palm was a dead rat, its teeth fixed in a permanent grimace.
「まじつ」彼女は恥ずかしそうに言って手を差し出した。どぶドワーフの薄汚れた掌に横たわっていたのは、きっと歯を食いしばったままのネズミの死骸だった。
***
原文で楽しみにしていた点の一つが、ブープーのしゃべる片言が、英語ではどんな風に表現されてるのかでした。動詞が抜けてたり、ときおり目的格の”me”や”him”が主語になってたり。「まじつ!」は単に”Magic”ですか。それにしても”magic”と日本語の「魔術」は似ていますね。偶然でしょうか、それとも”aqua”と「閼伽」のようにどこかで繋がっているのでしょうか。
“This is insane--I hope you know that!” Sturm muttered in disgust.
“Sanity ended when we followed Tika into the kitchen of the Inn of the Last Home,” he said.
“True enough,” the knight agreed with a sigh.
「これは正気の沙汰ではない――わからないのか」スタームがうんざりとつぶやいた。
「正気なんてものは、<憩いの我が家>亭でティカのあとからキッチンにとびこんだときに失くしたよ」
「もっともだ」騎士はため息まじりに同意した。
It was a dead--very dead--lizard.
“You wear around neck,” she said. “Cure cough.”
それは死んだ――まさしく死んだ――トカゲだった。
「あなた、くびにまく。せき、なおる」
***
ブープー言行録をあげていったらきりがないので、ここはバルプ大王の謁見の間でのブライトブレイド卿の反応をあげて終わりにしましょう。
Thus Sturm was shocked to the core of his being when confronted by a bright red Huma battling a purple-spotted dragon beneath an emerald sky.
このせいで、スタームは存在の根底にまで衝撃を受けた。なにしろ、真紅のヒューマが紫斑のあるドラゴンと鮮やかな緑の空の下で闘っているのである。
***
"be shocked to the core of his being"ですか…なんかスタームいじりが楽しくなってきました。
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