Flint steadfastly refused all others of help, even when the tip of his beard got wet. Then he vanished. Caramon, following him, fished the dwarf out of the water and slung him over his shoulder like a wet sack, the dwarf too tired and frightened to grumble.
戦記1巻p289
フリントは手助けの申し出をすべてきっぱりと断り、顎ひげの先が濡れたときでもそれは変わらなかった。しかし、次の瞬間かれは消え失せた。うしろを歩いていたキャラモンが水の中から<ドワーフ>を釣りあげて、濡れた麻袋のようにどさりと肩にかついだ。<ドワーフ>はあまりにも疲れておびえていたため、不平を言う元気もなかった。
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学生の頃、列に並んで実習船に乗り込もうとしていたら、途中で一人がまさしく”vanish”したことを思い出しました。えっと思った次の瞬間には、着用を義務づけられていた救命胴衣でぷかぷかと浮いていました。フリントもぜひ救命胴衣を・・・ないない。
登場時には「じゃがいも袋かなにかのように」つりあげられて憤慨していたのに、麻袋のようにかつがれて文句を言う元気もないさまに哀れを感じます。
“’The great city of Xak Tsaroth, whose beauty surrounds you, speaks to the good of its people and their generous deeds. The gods reward us in the grace of our home’”
“The gods reward them indeed.” Raistlin said, his lips parting in a cynical smile.
「『大いなる都ザク・ツァロスは御身を美々しく迎え、ここに住民の徳とその惜しみなき善行を表す。神々はわれわれに報いてこの郷を愛され給う』」
「神々はまさにかれらに報いを与えたのです」レイストリンの唇が開いて、皮肉な笑いを浮かべていた。
キサンス襲来。痛々しく焼け焦げた瀕死のリヴァーウィンドを楽にしてあげようとするタニスとスタームですが…
“Do as she says,” the mage hissed. “Carry him to her.”
Tanis’s face contorted with fury at the sight of Raistlin’s expressionless face, uncaring eyes.
“Take him to her,” Raistlin said coldly. “It is not for us to choose death for this man. That is for gods.”
「彼女の言うとおりにしてください」魔法使いはささやいた。「かれをあの人のところへ運ぶのです」
レイストリンの無表情な顔、無関心な目を見て、タニスの顔は怒りでひきつった。
「かれを運んでください」レイストリンは冷ややかに言った。「この人の生死を決定するのはぼくたちではありません。決めるのは神々です」
Tanis stared Raistlin. Not the quiver of an eyelid betrayed his feelings--if the mage had any feelings. Their eyes met and, as always, Tanis felt that the mage saw more than was visible to him.
タニスはレイストリンを見つめた。魔法使いは睫毛一筋にさえ感情を――もしかれに感情があったとして――表してはいなかった。二人の目が合い、いつものようにタニスは自分以上のものを魔法使いが見ているという気がした。
Suddenly Tanis hated Raistlin, hated him with a passion that shocked the half-elf, hated him for not feeling this pain, hated him and envied him at the same time.
突然、タニスはレイストリンが憎らしくなった。自分でも驚くほど激しく憎んだ。かれがこの苦痛を感じていないというので憎んだ。憎んで、しかも同時に嫉妬した。
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レイストが皆に嫌われるのはまさにこの点なんでしょうね。皆と感情を共有しようとしないこと。旧友に会えて嬉しい筈なのについ皮肉ってしまうこと。毒矢に当たって瀕死だったかれへのリヴァーウィンドやキャラモンの感情の発露に、ふさわしい感情表現を返していないこと。周囲が迷ったり動顛しているときに、一人冷静に正論を吐けること。
一方で、思いがけないときに感情を爆発させること。大の戦士二人が必死になって、火のついたドラゴンの頭を抱えて走ってくるさまなんて、普通に想像したら笑えると思いませんか?ただ皆は笑える精神状態でなかっただけですよ、状況から言って仕方ないんですが。
こんにちは、いつも更新楽しみにしています。竜槍サイトが次々と閉鎖される中、日英対訳ブログの開設は英語版も読むファンにとってとてもうれしいです。特にレイストリンのシーンは、たまりません。もうすぐブープーが登場するので、期待して待っています。
返信削除こんにちは、ご愛読&コメントありがとうございます。興味本位で英語版を読み始めた結果、邦訳の素晴らしさもより深く味わえるようになり、ご紹介せずにはいられなくなりました。
返信削除本日付けの分は珍しく出てきませんが、放っとくとレイストリンのシーンだらけになりそうです。でも、それで問題ないですよね(^^)