2014年10月16日木曜日

戦記1巻p268〜 ドラゴンの頭


 ケ・シュの村を後にして、沼地を進んだ一行はドラコニアンの待ち伏せに遭い、タッスルとフリントを除いて、ドラゴンが鎮座するドラコニアンの野営地に囚われてしまいます。しかもレイストリンは…

DRAGONS OF AUTUMN TWILIGHT  p151

“She found this in his neck,” he said, carefully holding up a feathered dart between thumb and forefinger. He glanced at the mage without love but with a certain amount of pity. “Who can say what poison burns in his blood?”

戦記1巻p268

「ゴールドムーンがかれの首からこれを見つけた」と、親指と人さし指で注意深く羽根のついた矢をつまみあげた。かれは魔法使いに、愛情はないが何がしかの哀れみのこもった視線を走らせた。「どんな毒がはいったのか誰にもわからない」

“Stop--Caramon!” Tanis yelled, but was too late.
With a roar like a wounded animal, the huge warrior leaped toward the draconians. Bamboo gave way before him, the shards splintering and cutting into his skin. Mad with the desire to kill, Caramon never noticed. Tanis jumped on his back as the warrior crashed past him, but Caramon shook him off as easily as a bear shakes off an annoying fly.

「やめろ――キャラモン!」タニスが叫んだが、間に合わなかった。
 大男の戦士は手負いの獣のような咆哮をあげながら、ドラコニアンにとびかかった。竹の檻がめきめきと裂けて、ささくれがかれの皮膚に突き刺さった。しかし、殺戮の欲望に駆り立てられているキャラモンは、気にもとめなかった。タニスは突進していくキャラモンの背中に跳びついたが、戦士は熊がうるさい蠅をふりはらうように、かれをふり落とした。

Caramon stared at the creature without fear. “My brother in dying,” he shouted. “Do what you will to me. I ask only one thing. Give me my sword so that I can die fighting!”

 キャラモンは恐れるようすもなく、怪物をにらみつけた。「おれの弟は死にかけている」かれは怒鳴った。「おれを好きにするがいい。ただひとつ頼みがある。闘いながら死ねるよう、おれに剣を持たせてくれ!」

“Get out of here!” the half-elf ordered. “There’s nothing you can do. Raistlin’s dying, and the dragon--“
“Is Tasslehoff,” Flint said succinctly.

「ここから逃げろ!」と、<ハーフ・エルフ>は命じた。「あんたにできることはない。レイストリンは死にかけているし、そのうえドラゴン――」
「は、タッスルホッフだ」フリントがあっさりと言った。

The dragon shrieked and howled, and Caramon felt his mouth go dry and his stomach muscles clench. It was the first time he had ever gone into battle without his brother; the thought made his heart throb painfully.

 ドラゴンは叫び、うなり、キャラモンは口の中が乾いて胃がきゅっとしまるのを感じた。かれが弟なしで闘いに臨むのは初めてのことだった。それを考えると、かれの胸はずきずきと痛んだ。

***

「あんたが弟思いなのは、そうしてれば自分が気持ちいいからだったんだ。レイストリンがあんたを必要としてたんじゃない―あんたがかれを必要としてたんだ」

 伝説1巻より、タッスルの名言ですが、ここにもそれが現れてますね。キャラモンが本当にレイストリンのことを想っているなら、瀕死のかれの傍についているべきなのに。弟の死を目の当たりにするのに耐えられず、それくらいなら自分が先に死んでやるとばかりに暴挙に出るキャラモン。
 レイストリンはとっくに<大審問>で兄なしで闘いに臨んで、そして勝っているのにね。

“Go! Raistlin’s almost finished! You’re his only chance.”
This statement reached Caramon’s mind.

「行け!レイストリンの命がない。頼みの綱は君だけだ」
 この言葉がキャラモンを動かした。


A dragon’s head with a forked blue tongue was lunging at them. Tanis blinked in disbelief, then he heard a sound behind him that nearly made him leap into a tree in panic. He whirled around, heart in his throat, sword in his hand.
Raistlin was laughing.

 ドラゴンの頭が青い二又舌を出してつっこんでくるのだ。タニスは信じられずにまばたきしたが、そのとき背後で聞こえた異様な音に、かれは危うく恐慌をおこして木に跳びあがるところだった。まさしく心臓が喉からとび出しそうになって、剣を抜いて身をひるがえした。
 レイストリンが笑っていた。

Tanis had never heard the mage laugh before, even when Raistlin was a child, and he hoped he would never hear it again. It was weird, shrill, mocking laughter. Caramon stared at his brother in amazement, Goldmoon in horror.

 タニスは、今までに一度もこの魔法使いが笑うのを聞いたことがなかった――レイストリンがまだ子供のときでさえ――そして、二度と聞くことのないよう切望した。この世のものでないような、かん高い嘲りの笑いだった。キャラモンは弟を驚いて見つめ、ゴールドムーンは恐怖の目を向けた。

***

 はい、激レアなレイストの爆笑シーンですよー。周囲はどん引きしてますが、本人が楽しそうだからいいでしょう。


Sturm eyed the laughing Raistlin warily. “What’s the matter with him? Still poisoned?”

 スタームは笑っているレイストリンを用心深く見つめた。「かれはどうしたのだ?まだ毒が効いているのか?」

***

「脳みそが胃袋の中にある」発言もそうですが、実はスタームもかなりの毒舌家なんじゃないかと思います。レイストの毒舌は素ですが、スタームの場合、ちゃんと悪意がこもってる分なお悪いような。


Raistlin stumbled forward, accepting the support of his brother’s strong arm. The mage glanced behind at the sundered dragon’s head and he wheezed, his shoulders shaking in silent, grin amusement.

 レイストリンはつまずいて、しぶしぶ兄の力強い腕の支えを受けた。魔法使いは、ちらりとふり返ってばらばらになったドラゴンの頭を見ると、ぜいぜいと喘ぎながらも、薄気味悪い喜びに、黙って肩を震わせて笑っていた。

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