2014年12月30日火曜日

戦記5巻p85〜 脱出

DRAGONS OF SPRING DAWNING p44

“What are you doing?”
“I am escaping certain death, Half-Elf!” The mage laughed unpleasantly, the strange laughter Tanis had heard only twice before. “What do you think I am doing?”

戦記5巻p85

「何をしている?」
「確実な死から脱出するのですよ、ハーフ・エルフどの」魔法使いは、声だけで笑った。タニスが、以前に二度だけ耳にしたことのある異様な笑い声。「僕が何をするつもりかわかりますか?」

“Can the orb do this for all of us?”
“Possibly,” Raistlin answered, coughing, “but I am not certain. I will not chance it. I know I can escape.”

「オーブには、おれたち全員もそうする力があるか?」
「あるいはね」と、レイストリンは咳きこみながら、「でも、確信はありません。試してみるつもりもありません。ぼくが脱出できる、ということだけわかっていればいいのです」

”The others are not my concern. You led them into this blood-red death, Half-Elf. You get them out!”

「ほかの人のことは、ぼくの知ったことではない。この鮮血色の死の中へみんなを連れこんだのは、あなたでしょう、ハーフ・エルフどの。だったら、あなたが救い出せばいい」

“At least, your brother--“
“No one,”
“Stand back.”

「少なくとも、血を分けた兄弟くらいは――」
「誰も、です」
「退ってください」

Insane, desperate rage twisted Tanis’s mind. Somehow he’d make Raistlin listen to reason!

 タニスの心を、狂気めいた怒りが締めあげた。なんとかして、レイストリンに道理をわからせるのだ!

Tanis started forward, then saw silver flash in the mage’s hand. From nowhere, seemingly, had come a small silver dagger, long concealed on the mage’s wrist by a cunningly designed leather thong.

 タニスは足を踏み出しかけたが、その時、魔法使いの手の中に、きらりと銀色に閃くものが見えた。まるで虚空から現われたような、小ぶりの銀の短剣。以前から、魔法使いの手首に皮ひもで巧妙に隠されていたものである。

“All right,”
“You’d kill me without a second thought. But you won’t harm your brother. Caramon, stop him!”

「よかろう」
「君は、その気なら即座におれを殺せるだろう。だが、自分の兄弟までは傷つけられまい。キャラモン、かれをとめろ!」

“Don’t do it, my brother,”

“Go ahead, Caramon!”
“He won’t hurt you.”

「やめたほうがいいよ、兄さん」

「行くんだ、キャラモン!」
「君を傷つけたりできるはずはない」

“Tell him, Caramon,” Raistlin whispered. The mage’s eyes never left his brother’s. Their hourglass pupils dilated, the golden light flickered dangerously.

「タニスに言ってあげたら、キャラモン?」レイストリンがささやいた。魔法使いは、片時も兄から視線をはずさなかった。砂時計のようにくびれた瞳孔が広がり、金色の光が危険なきらめきをみせる。

“Tell Tanis what I am capable of doing. You remember. So do I. It is in our thoughts every time we look at one another, isn’t it, my dear brother?”

「タニスに、ぼくが何ができるか教えてあげればいい。兄さんは憶えているだろう?ぼくもだ。ぼくたちは、目を合わせるたびにあのことを考えてしまうんだよね、そうだろう、大事な兄さん?」

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