2014年11月8日土曜日

戦記2巻p225〜 寓話

DRAGONS OF AUTUMN TWILIGHT p393

“If it truly was we humans who turned from them, not the gods who turned from us as we’re always thought, then why have they waited so long to make their presense known?”

戦記2巻p225

「もし通念のように神々がわれわれに背を向けたのではなく、本当は背を向けたのはわれわれ人間のほうなのだと言うなら、ではなぜ神々は、これほど長くご自分たちの存在を知らせなかったのだ?」

Goldmoon knelt down beside the dying man in silence, thinking how to phrase her answer.

 ゴールドムーンは黙って瀕死の男のそばに膝をつき、どのように自分の考えを言い表そうかと考えた。

“Imagine you are walking through a wood, carrying your most precious possession--a rare and beautiful gem. Suddenly you are attacked by a vicious beast. You drop the gem and run away. When you realize the gem lost, you are afraid to go back into woods and search for it. Then someone comes along with another gem. Deep in your heart, you know it is not as valuable as the one you lost, but you are still too frightened to go back to look for the other. Now, does this mean the gem has left the forest, or is it still lying there, shining brightly beneath the leaves, waiting for you to return?”

「あなたは今森の中を歩いているのだ、と想像してみてください。手にはあなたのいちばん大切な財産を持っています。珍しい、美しい宝石です。突然あなたは猛獣に襲われました。宝石をとり落として逃げだします。宝石を失くしたのに気づいたのですが、森に戻って捜すのが恐ろしく思えます。そのとき、ある人が別の宝石を持ってやってきました。あなたは、心の底ではそれが失くした宝石ほど高価なものではないとわかっているのですが、それでも恐ろしくて捜しに戻ることができません。さて、ではその宝石は、森からどこかへ失せてしまったのでしょうか?それとも、まだそこに落ちたまま、枯れ葉の下でまぶしく輝きながら、あなたが戻ってくるのを待っているのでしょうか?」

***

「クリンの神々とはいかなる存在なのか?」
 過去記事「古い神々」や「いにしえの神々」で何度も問うてきましたが、どうやらクリンの善の神々は、正しい知識を持つものの祈りしか聞き届けないのではなく、正しい名前で祈られなければ、聞き届けることができない、そういう枷を嵌められた存在なのかも知れません。それは<大変動>以降、自分たちの名が忘れられて以来、さぞもどかしかったことでしょうね。
 私は幼少期に受けた教育の影響で、神というものは全知全能で、どんな小さな祈りの声も聞き届けてくださる慈悲深い存在なのだと思っていました。だから長じて、祈りが何の力も持たない現実を目の当たりにして激しく失望することになるのですが。
 森の中で息をひそめている小さな宝石。猛獣に襲われる危険を冒してでも取り戻しに行く価値が、それにはあるのでしょうか?人はそう思いたいのでしょうか?人はそれを求めるようにできているのでしょうか?


“Not yet,” Sturm said harshly. “But we can expect them any minute. Both Eben and Gilthanas are gone.”

「まだだ」スタームが険しく言う。「しかし、いつ来てもおかしくない。エーベンとギルサナスが二人ともいないのだ」

***

 深刻なシーンのはずなんですけど、険しい顔のスタームも、キャラモンもタニスも女装してるんですよね、と想像するとぶちこわしになるのでやめましょう。やめましょうったら。(でも脳裏から消えない)
 以下、話は前後しますが続けていきます。


p398-399

“I heard something, Tanis, and I went to investigate,” Eben said, his mouth set in a firm line.

p234
「何かが聞こえたんだ、タニス、それでわたしは調べに行ったんだ」エーベンは言うと、口を一直線に結んだ。

“Remember--I warned you.” Gilthanas’s eyes shifted to Raistlin. “I returned to see if our mage was really as exhausted as he said. He must not have been. He was gone.”

「忘れるな――ぼくは忠告したぞ」ギルサナスはレイストリンに視線を移した。「ぼくはこの魔法使いが、自分で言うとおり本当に疲れきっているのか見に戻ったのだ。それほどでもなかったようだな、いなくなっていたのだから」

“Why should I speak?” Raistlin whispered harshly, his voice soft and lethal with hatred. “None of you trusts me, so why should you believe me? I refuse to answer, and you may think as you choose. If you believe I am a traitor--kill me now! I will not stop you--“ He began to cough.

「なぜぼくが話さなければならない?」レイストリンがとげとげしくささやいた。低い、憎しみにとぎすまされた声だった。「誰一人ぼくを信用していないのに、どうしてぼくの言葉が信じてもらえます?返答は拒否します。お好きなように考えればいいでしょう。ぼくが裏切り者だと信じているなら――今殺せばいい!ぼくはとめませんよ――」かれは咳こみはじめた。

“You’ll have to kill me, too,” Caramon said in a choked voice. He led his brother to his bed.

「そうなれば、君たちはおれも殺さねばならんな」キャラモンは押し殺した声で言うと、弟を寝床に連れて行った。

***

“lethal with hatred”「憎しみにとぎすまされた」これまた痺れる訳です。

 ここはレイストリンでなくたって切れますよね!みんなドロウに取り殺されちゃえばよかったのよー!…涙出そうです。

2 件のコメント:

  1. このレイストリンの台詞は読んでいて切なくなりました。
    常に周囲から疑いの目を向けられるなんて、誰だって気持ちのいいものではありませんよね...

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  2. 初読時は、奴を油断させるために芝居でもしてるのかと思いましたよスターム。奴やギルサナスと比べて、レイストに嫌疑を向ける根拠があまりに薄弱すぎやしませんか?ここまで頑張ってきたかれが、ちょっといなくなってたくらいで。

    "kill me now! I will not stop you--"
    もう泣きそうです。

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