2015年2月8日日曜日

戦記6巻p215〜 守護者

DRAGONS OF SPRING DAWNING p335

“Yes, my brother,” said Raistlin, answering his brother’s thoughts, as usual. “It is I--the last guardian--the one you must pass to reach your goal, the one Her Dark Majesty commanded be present if the trumpets should sound.”

戦記6巻p215

「そうだよ、兄さん」レイストリンは、いつもどおり兄の考えに答えて言った。「ぼくなんだよ――最後の守り手は。そして、兄さんが目的地にたどり着くためにはどうしても通過しなければならない関門であり、また、万一角笛が響けばこの場に居合わせるよう<暗黒の女王>の命令を受けた者なんだ」

Raistlin smiled derisively. “And I might have known it would be you foolishly tripped my spelltrap….”

 レイストリンは自嘲的に笑った。「予測しておいて然るべきだったな、ぼくの呪文の罠にとびこんでくるような愚か者は兄さんだろうって……」

“You wear the Black Robes now?” he asked through parched lips. “I can’t see…in this light….”

「おまえは今では<黒いローブ>を着ているのか?」かれはからからの口で訊いた。「よく見えないんだ……暗くて……」

“Yes, my brother,” Raistlin replied, raising the Staff of Magius to let the silver light shine upon him. Robes of softest velvet fell from his thin shoulders, shimmering black beneath the light, seeming darker than the eternall night that surrounded them.

「そうだよ、兄さん」レイストリンはマギウスの杖を差し上げて、銀色の光が自分に当たるようにした。薄い方にまとった極上の天鵞絨のローブが明かりの下で黒いつやを放ち、周囲の永劫の夜よりもさらに黒く見えた。

“I don’t understand--“
“No, of course not, dear brother,” Raistlin said, with a touch of the old irritation and sarcasm.

「おれには理解できん――」
「それはそうだろうね、大事な兄さん」レイストリンの声には、以前と同じいらだちと皮肉な調子があった。

The golden, hourglass eyes narrowed, Raistlin’s voice grew soft. No longer forced to whisper, the mage yet found whispering more compelling.

 砂時計のようにくびれた金色のその眼がすっと狭まり、レイストリンの声は低くなった。もはやささやき声を強制されていないのに、レイストリンは、ささやくほうが人に言うことをきかせやすいのに気づいていた。

“No, I am not lying,”
“Not that I can’t lie when it suits my purposes. But you will find, dear brother, that we are close enough still so that I cannot lie to you. And, in any case, I have no need to lie--it suits my purpose that you know the truth.”

「違うよ、ぼくは嘘をついていない」
「でも、嘘がつけないというわけじゃない。大事な兄さんにもいずれわかると思うけれど、ぼくらがいまだにとても緊密な関係にあるから、だからぼくは兄さんに嘘がつけないんだ。それに、いずれにせよ、ぼくには嘘をつく必要がない――兄さんに真実を知ってもらうことは、ぼくにとって好都合なのだから」

“You can’t kill him”--Caramon hoped devoutly Berem was listening and would act when it was time--“only your dark Queen can do that, I suppose. So that leaves--“

「そして、おまえにはベレムは殺せない」――キャラモンは、どうかベレムがこの言葉に耳を傾けていてくれるように、そして機会がきたら行動してくれるように、と必死で願った――「ベレムを殺せるのは、おまえの<暗黒の女王>だけのはずだ。違うか?ならば、残るのは――」

“You, my dear brother,” Raistlin said softly. “Yes, I can kill you….”

「君だよ、親愛なる兄さん」レイストリンはそっと言った。「そうだよ、ぼくは兄さんなら殺せる……」

With Tanis’s unwitting help, I was able to rid myself of the one man upon Krynn who could have bested me. Now I am the most powerful force for magic in this world. And I will be more powerful still…with the Dark Queen gone!”

「タニスが自分ではそうと知らずに手伝ってくれたおかげで、ぼくは、クリン上でぼくを負かせる唯一の男を排除することができた。今ぼくは、魔法に関してはこの世で最強の存在だ。そして、さらに強力になるのだ……<暗黒の女王>が失せれば!」

“Remember, my brother”--Raistlin’s voice echoed in Caramon’s mind--“this happens because I choose it to happen!”

「忘れないでおくれ、兄さん」――レイストリンの声がキャラモンの頭の中で反響した――「この結末は、ぼくがこうなるよう選んだものなのだよ!」

***

“this happens because I choose it to happen!”
「ぼくがこうなるように選んだからだ」

「魂の戦争」以前に、「伝説」以前に、この時点で既に世界の運命を手にしていたレイストリン。いや、《九英雄》の一人一人が、少なくとも一度はそれを手にしていましたね。ああ、だから九英雄だったのか。初読時、なぜティカやローラナが入らずキティアラが入っているのか不思議だったんですが、やっと納得しました。

 どうでもいいですがレイストリン、この引用部分だけで"my brother"を3回、"dear brother"を2回、さらに"my dear brother"と1回言ってます。それも"softly"に、それもあんな文脈で。ああもうこの弟ときたら。そうかそんなに淋しかったんだね。

2 件のコメント:

  1. 「時の瞳もつ魔術師の竜」から何だかんだキャラモンのことを思い浮かべてばかり。彼自身なかなか認めようとしませんが、そこがたまりません。

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  2. 初登場時からして全く素直じゃないですよね。かれが素直に好意を示したのって、ブープーだけかもしれませんね。
    あ、パリンのことも可愛がってましたっけ。さすがに年を経て成長したんでしょうか。

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