2015年2月12日木曜日

戦記6巻p256〜 復讐

DRAGONS OF SPRING DAWNING p359

Soth’s flickering gaze turned to Kitiara. The pale lips curled in derision. “The half-elven man remains your master still.”

“No, I think not,” Kitiara replied. Turning, she looked after Tanis as the door shut behind him.

戦記6巻p256

 ソスの明滅する視線がキティアラに向かった。青白い唇が冷笑を浮かべる。「あのハーフ・エルフは依然としてそなたの主なのだな」

「いや、そうは思わぬ」キティアラは振り返って、タニスを眼で追い、扉が閉まるのを見送った。

***

“derision”冷笑というよりも嘲笑のイメージが強いです。ここでキティアラ様が素直な反応を示していたら、話はまた違っていたでしょうね。


“Sometimes, in the still watches of the night, when he lies in bed beside her, Tanis will find himself thinking of me. He will remember my last words, he will be touched by them.”

「タニスはきっと、夜のしじまに彼女と並んで寝床に横たわりながら、ふと知らず知らずわたしを思い出してしまうはずだよ。かれはわたしの最後の言葉を思い出し、きっと心動かされるだろう」

“I have given them their happiness. And she must live with the knowledge that I will live always in Tanis’s heart. What love they might find together, I have poisoned. My revenge upon them both is complete.”

「ちゃんと効果は考えてある。彼女は、タニスの胸には常にわたしが住んでいることを承知の上で生きてゆかねばならないのだ。二人がどんな愛を築き上げるにせよ、わたしはそこに毒を注いでおいた。あの二人へのわたしの復讐は完璧だ」

***

“I have given them their happiness."どう取ったらいいのか頭抱えた一文でした。そう来ますか。このように来られては、いかな激しい情熱で焼き滅ぼされた燃え殻といえども、感嘆せずにいられましょうか。


“Those you command to die shall die. Those you allow to live”--Soth’s glance flickered to the door--“shall live.”

「そなたが、死すべし、と命じた者には必ず死を与えよう。そなたが生を許した者は」――ソスは扉の方へ眼をやって――「生かしておこう」

“Remember this, of all who serve you, Dark Lady, I alone can offer you undying loyalty. This I do now, gladly.”

「お忘れなきよう――<暗黒の女卿>よ、そなたに仕える者すべての内で、不滅の忠誠を捧げられるのはわたし一人だということを。今は喜んでその忠誠を捧げよう」

“Farewell, Kitiara,”
“How does it feel, my dear, to know that you have brought pleasure to the damned? You have made my dreary realm of death interesting. Would that I had known you as a living man!”

「さらばだ、キティアラ」
「どんな気分かな、愛しい人よ、あなたは呪われし者に愉悦をもたらしてくれたのだぞ。あなたのおかげで、わが陰鬱なる死の領域が、おもしろうなった。生あるうちに、あなたと知りあいたかったものよ!」

***

 訳文では「生あるうちに」ですが、直訳すると「生身の男として」と読めます。1月27日のエントリ「かれの愛など欲しくもない」で叫んだことに、ソス卿も異存はないようですね。しかし生前のソス卿の性格からして、キティアラ様に太刀打ちできるとはとても思えませんよ。


“But, my time is eternal. Perhaps I will wait for one who can share my throne--“

「だが、わが時間はとこしえだ。待つうちに、わが玉座をわかちあえる相手もこようというもの――」

She was by herself in the darkness and for a moment she was terrified.

This was reality, hard and solid, she thought, breathing in relief.

For long moments she stood in the crumbling hallway, her fingers running over the rough metal edges of the blood-stained Crown.

 彼女は闇の中に一人残り、しばらく恐怖に包まれていた。

 これは現実だ、堅固で頑丈だ、と彼女は安堵の吐息をもらした。

 長いあいだ、彼女は崩れゆく廊下に立ちつくし、ざらついた金属の縁に指を走らせていた。血塗られた<力の冠>に。

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