2015年1月7日水曜日

戦記5巻p221〜 罠

DRAGONS OF SPRING DAWNING p122

“I didn’t ride out of a children’s story. I rode out of fire and darkness and blood.”

戦記5巻 p221

「わたしは、子供のお伽話から出てきたのではありません。わたしは、火と闇と血の中を通ってきたのよ」

I’m trapped, Laurana realized. She would have to sit here the rest of the afternoon, smiling and waving and enduring speech praising her heroism when all she wanted was to lie down in some dark, cool place and sleep.

(わたしは罠にかかったんだわ)とローラナは悟った。彼女は午後の残りをずっとここにすわったまま、望みといえばどこか暗くて涼しい場所で横になって眠ることだけだというのに、実際には、微笑し、手を振り、英雄的行為を讃えて次々と述べられる演説を耐え忍ばねばならないのだ。

And it was all a lie, all a sham. If only they know the truth. What if she stood up and told them she was so frightened during the battles that she could remember details only in her nightmares? Told them that she was nothing but a game piece for the Knights? Told them that she was here only because she had run away from her home, a spoiled little girl chasing after a half-elven man who didn’t love her. What would they say?

 それはすべて嘘、すべて偽りなのである。もしかれらが真実を知ったなら?彼女が立ちあがって、自分は戦闘中あまりに怖かったので、細部は悪夢の中でしか思い出せない、と群衆に告げたなら?自分は騎士団にとってはゲームの駒でしかない、と告げたなら?自分がここにいるのは、家出したからにすぎない――片想いの<ハーフ・エルフ>の男を追いまわす、甘やかされた小娘だったのだ、と告げたなら?人々はなんと言うだろう?

***

「横になる」lieと「嘘」のlieを引っ掛けてるんですね、ここ。


“Tanis Half-Elven received a wound in the battle of Vingaard Keep.”

“I do this only because we are two women who understand each other.
“Kitiara”

「ハーフ・エルフのタニスがヴィンガールド城砦の戦いで負傷した」

「わたしがこの配慮をするのは、ひとえに、われら二人がお互いを理解しあっている女同士だからである。
キティアラ」

“surely you don’t think Tanis--“
“Besides Kitiara’s a Dragon Highlord now. What would Tanis be doing with her--“

「まさかタニスのこと、本気にしてないよね――」
「それに、キティアラは今じゃドラゴン卿じゃないか。タニスが彼女と一緒にいるわけが――」

Laurana turned her face away abruptly. Tasslehoff stopped and glanced at Flint, whose own face suddenly seemed to age.

 ローラナが不意に顔をそむけた。タッスルホッフは口ごもって、フリントを見た。フリントの顔は、急に年老いたようだった。

“So that’s it,” the dwarf said softly. “We saw you talking to Kitiara on the wall of the High Clerist’s Tower. You were discussing more than Sturm’s death, weren’t you?”

「そうか、そうだったのか」<ドワーフ>は低く言った。「<大司教の塔>でおまえさんはキティアラと話をしていたっけ。おまえさんたちが話していたのは、スタームの死のことだけじゃなかったんだな?」

“I saw him with her in the dream, just as I saw Sturm’s death. The dream’s coming true….”

「私は夢でタニスが彼女と一緒にいるのを見た。そして、夢で見たのと同じようにスタームは死んだ。夢は次々と実現しているのよ……」

“I haven’t died yet, like in the dream,”
“Besides, Laurana, Tanis wouldn’t--“

「ぼくだって、夢の中みたいに死んだりしていないよ」
「第一、あのタニスが、ありえない――」

Flint shot Tas a warning glance. The kender lapsed into silence. But Laurana had seen the glance and understood. Her lips tightened.

 フリントがすばやく警告の視線をタッスルに投げる。タッスルがはっと黙り込んだ。しかし、ローラナはその視線を見逃さず、意味をも読みとった。彼女の唇が固く引き結ばれる。

“Yes, he would. You both know it. He loves her.”
“I’m going. I’ll exchange Bakaris.”

「いいえ、ありえるわ。二人とも知っているでしょう。タニスは彼女を愛しているのよ」
「わたしは行くわ。バカリスを交換しましょう」

Rising to her feet, she regarded Flint coldly, as if he were someone she had just met. The dwarf was, in fact, strongly reminded of her as he had seen her Qualinesti, the evening she had run away from home to follow after Tanis in childish infatuation.

 彼女は立ち上がり、まるで初めて会った人に対するような冷ややかな目でフリントを見た。フリントは、実際、クォリネスティでの彼女をまざまざと思い出さされた。初恋にのぼせあがり、タニスを追って家出をした、あの夜の彼女である。

***

 二つの罠に翻弄されて、ローラランサラーサ姫、振り出しに戻る。まあ仕方ないですね。年端もいかぬ娘を担ぎ上げて利用しまくった方が悪いです、はい。

2015年1月6日火曜日

戦記5巻p192〜 青銅竜

DRAGONS OF SPRING DAWNING p105

“Pardon me, Respected Sire,” Khirsah interrupted, using a term of high respect among dwarves, “may I be of assistance?”
Startled, Flint whirled around to see who spoke.

戦記5巻p192

「失礼ながら、尊きご老公」キルサーは、ドワーフ間でのとっておきの敬語を使って、口をはさんだ。「お力添えさせていただきましょうか?」
 フリントは仰天して、誰がしゃべったのかとふり向いた。

The dragon bowed its great head. “Honored and Respected Sire,” Khirsah said again, in dwarven.
Amazed, Flint stumbled backward, tripping over Tasslehoff and sending the kender to the ground in a heap.

 ドラゴンは大きな頭を垂れた。「誉れ尊きご老公」キルサーは再びドワーフ語で言った。
 フリントは驚いてあとずさり、タッスルホッフにぶつかって、かれを地面に突きころばした。

“Well, I--I don’t know,” stammered Flint, flushing in pleased embarrassment at being thus addressed by a dragon. “You might…and then again you might not.” Recovering his dignity, the dwarf was determined not to act overawed.

「さて、ど、どうかな」フリントは竜からこのように呼びかけられて、嬉しいやらまごつくやらで、赤面しながらどもった。「では、頼もうか――いや、やはり結構じゃ」威厳を取り戻して、フリントは卑屈になるまいと決めた。

“Just that I’ve had more important things on my mind lately,”
“and it may take me a while to get the hang of it again.”

「ただ、近ごろ、より重要なことごとが気にかかっていただけじゃ」
「それで、こつを取り戻すのに少し時間がかかるかもしれん」

“Certainly, Sire,” Khirsah said without the ghost of a smile. “May I call you Flint?”
“You may,” said the dwarf gruffly.

「それはもちろんでしょうとも、ご老公」キルサーは微笑の片鱗も洩らさずに言った。「フリント、とお呼びしてもかまいませんか?」
「うむ」フリントはぶっきらぼうに答えた。

“My name to mortals is Fireflash.” The dragon gracefully bowed his head. “And now, if you will instruct your squire, the kender--“
“Squire!”

「定命の者のあいだでは、ファイアフラッシュと呼ばれている」ドラゴンは優雅に頭を下げた。「では、あなたの従士のケンダーに――」
「ぼくが従士だって!」

***

 些細なことですが、”squire”と”squirrel”(リス)って似てますね。意外と「炉辺のネコと冬のみそさざい」はここに着想を得ていたりするのかもしれません。リスになったり従士になったり、忙しいタッスル。


“Instruct your squire to come up here; I will help him prepare the saddle and the lance of you.”

“Sir Flint probably isn’t accustomed to this newer model, Squire Burrfoot.”

「従士のケンダーにここへ登るようご命令ください。そうすれば、ぼくが手伝って、かれに鞍と槍のご用意をさせましょう」

「これは新型ゆえ、サー・フリントもお慣れになっていないかもしれない、従士バーフットよ」

“Hey! How do I steer?”
“You indicate which direction you want me to turn by pulling on the reins,”
“Ah, I see,”
“After all, I am in charge--ulp!”
“Certainly, Sire!”

「おい!方向転換はどうやって指示するんじゃ?」
「行きたい方向に手綱を引いてくだされば結構です」
「おお、わかったぞ」
「少なくとも、主導権はわしにあるわけだな――うっぷ!」
「もちろんですとも、ご老公」

“Wait, the reins--“ Flint cried, grasping at them as they slid out of his reach.
Smiling to himself, Khirsah pretended not to hear.

「待て、手綱が――」フリントが叫びながら手をのばしたが、手綱は手の届かないところへ逃げてしまった。
 キルサーは独りでにっこりすると、聞こえないふりをした。

***

 ドラゴンランス、その基盤であるD&Dの設定では、色の名前がついているのが悪竜で、金属の名前がついているのが善竜だそうですが。「青銅竜」というとどうしても、アン・マキャフリイの『パーンの竜騎士』シリーズが思い出されます。雄竜の中で最も強く大きく、女王たる黄金竜とつがいになれる位、青銅竜。フ=ラルの騎竜ニメンスも、いい性格してたなあ。

2015年1月5日月曜日

戦記5巻p167〜 成算

DRAGONS OF SPRING DAWNING p90

“How many?” Flint asked, squinting.
“Ten,” Tas answered slowly. “Two flights. Big dragons, too. Maybe the red ones, like we saw in Tarsis.”

戦記5巻p167

「何頭だ?」フリントは目を狭めて訊いた。
「十頭」タッスルはゆっくりと答えた。「二小隊だ。しかも、大きいドラゴンだよ。赤いやつらかもしれない、タルシスで見たような」

”I can’t see their color against the dawn’s light, but I can see riders on them. Maybe a Highlord. Maybe Kitiara…Gee,” Tas said, struck by a sudden thought, “I hope I get to talk her this time. It must be interesting being a Highlord--“

「朝焼けと混じって、色が見分けられないけど、乗り手がいるのはわかる。たぶん、ドラゴン卿だ。たぶん、キティアラ……あ、そうだ」タッスルは不意に思いついて言った、「ぼく、今度こそ彼女と話してみたいな。ドラゴン卿になるってのは、きっとおもしろいはず――」

Tas stared eastward. He couldn’t believe his eyes, so he leaned far out, perilously close to falling over the edge of the wall.

 タッスルは東天を睨んだ。自分の眼が信じられなくて、かれはぐっと身をのりだし、胸壁の縁を越えて落ちそうになった。

“It’s like in Pax Tharkas!” Tas babbled incoherently. “Like Huma’s Tomb. Like Fizban said! They’re here! They’ve come!”

「パックス・タルカスにあったとおりだ!」タッスルは支離滅裂にしゃべりたてた。「ヒューマの墓所にあったとおりだ。フィズバンの言ったとおりだ!かれらが来たんだ!かれらが来てくれたんだ!」

Now he could make out what had been nothing more than a haze of pink light broken by the darker, pointed masses of the mountain range.

 今や、かれにも見わけられた。先ほどまでは、黒い固まりのような険しい連山に遮られた、ただの薄紅のぼんやりした光のようにしか見えていなかったものが。

But he’d worn the glasses just long enough to see the dawn touch the wings of dragons with a pink light, pink glinting off silver.

 しかし、眼鏡をかけていたわずかな時間に、かれはちゃんと見てとっていた。曙の光が薄紅に染めた、ドラゴンの翼の色を――薄紅に染まった銀色の翼を。

“Put your weapons down, lads,” Flint said to the men around him, mopping his eyes with one of the kender’s handkerchiefs. “Praise be to Reorx. Now we have a chance. Now we have a chance….”

「みんな、武器をおろしていいぞ」フリントは周囲の兵たちに言い、<ケンダー>のハンカチのうちの一枚で眼をぬぐった。「レオルクスの御名を讃えん。これで成算が訪れたぞ。これで成算が訪れたぞ……」

***

 もしもドラゴンランスが映画化されたなら、このシーンにはどれだけ華々しいBGMがつくんだろうと想像するだけで鳥肌が立ちます。そういうシーンは多々ありますね。でも「夏の炎の竜」のスティールとカオスの対峙、あそこは音楽いらないなあ。効果音と台詞だけで逝けます、たぶん。

2015年1月4日日曜日

戦記5巻p152〜 喪失

DRAGONS OF SPRING DAWNING p83

“’Therefore, I appoint to fill the position of leadership of the Knights of Solamnia, Lauralanthalasa of the royal house of Qualinesti…’” The Lord paused a moment, as if uncertain he had read correctly.

戦記5巻 p152

「『それゆえ、わたしはソラムニア騎士団の指揮官の位に、クォリネスティ王家のローラランサラーサを指名する――』」太守は、まるで読み間違いではないかと確かめるように、一瞬口ごもった。

An elfmaid from the royal household. Not even old enough, by elven standards, to be free of her father’s house. A spoiled little girl who had run away from her home to “chase after” her childhood sweetheart, Tanis Half-Elven. That spoiled little girl had grown up. Fear, pain, great loss, great sorrow, she knew that, in some ways, she was older than her father now.

 王家の出のエルフ乙女。いまだ未成年――エルフの平均年齢からみれば――で、父親の保護下になければならない身の。子供時代の恋人<ハーフ・エルフ>のタニスを追って家出をしてのけた、甘やかされた小娘。その甘やかされた小娘は、成長をとげていた。恐怖、苦痛、多大な喪失、深い悲哀――彼女はそれを知っていた――ある面では――彼女は今では父親よりも齢を重ねていた。

“I don’t want this,”
“I don’t believe any of us were sitting around praying for a war,”
“But war has come, and now you must do what you can to win it.”

「わたしはこんなことは望みませんでした」
「ここに臨席している中に、戦を望んでいた者などいようはずがない」
「それでも、戦は向こうからきた。今はあなたが、戦に勝つためにできることをなさねばならない」

“I have seen love that, through its willingness to sacrifice everything, brought hope to the world. I have seen love that tried to overcome pride and a lust for power, but failed. The world is darker for its failure, but it is only as a cloud dims the sun.”

「わたしはかつて、何物をも犠牲に捧げて悔いない献身により、愛が世界に希望をもたらすのを見た。わたしはまた、自尊心や力への渇望を克服しようとして失敗した愛も目にした。その失敗のせいで世界は暗くなったが、しかしそれは、雲がつかのま太陽を翳らせるようなものでしかない」

***

 前者はヒューマと、シルヴァラの姉のことでしょうか。後者はクリサニア?(「目にした」、と過去形で語られていますが、アスティヌスのような存在にとって、過去も未来も関係ないのではないでしょうか)


“The sun--the love, still remains. Finally I have seen love lost in darkness. Love misplaced, misunderstood, because the lover did not know his--or her--own heart.”

「世界は――愛は――常に輝いているのだ。それから、わたしは闇の中に見失われた愛も見た。その愛は、誤って与えられた愛、誤って理解された愛だ。それというのも、その男――あるいは女――が自分の心をわかっていなかったからなのだ」

***

 と来ると、やっぱりキティアラがイメージされます。それともタニス?ローラナは一度かれを喪って取り戻したのでしょうか、それとも最初から喪ってはいなかったのでしょうか。


“My advice to you is: concentrate on your duty.”

“I will take the leadership of the armies,” she said in a voice nearly as cold as the void in her soul.

「私からの助言は、『自分の務めに集中せよ』だ」

「全軍の指揮権、わたしが受けましょう」その声は、彼女の胸中の空洞に劣らないほど冷えびえとしていた。

2015年1月3日土曜日

戦記5巻p118〜 歴史家

DRAGONS OF SPRING DAWNING p63

“So this ends your journey, my old friend,” Astinus said without compassion.
Raistlin raised his head, his golden eyes glittering feverishly. “You do know me! Who am I?” he demanded.
“It is no longer important,” Astinus said. Turning, he started to walk out of the library.

戦記5巻p118

「では、これでそなたの旅は終わりだな、わが旧友よ」アスティヌスは無感情に言った。
 レイストリンが頭を上げ、金色の眼に熱病めいた光が点った。「あなたはやはりぼくをご存知なんだ!ぼくはいったい誰なんです?」
「それはもはや重要ではない」アスティヌスはそう言うと、背を向け、図書館から歩み去りかけた。

“Don’t turn your back on me as you have turned it on the world!” Raistlin snarled.

「世界に背を向けてきたくせに、ぼくにまで背を向けるな!」レイストリンが怒鳴った。

“Turn my back on the world…” the historian repeated softly and slowly, his head moving to face the mage. “Turn my back on the world!” Emotion rarely marred the surface of Astinus’s cold voice, but now anger struck the placid calm of his soul like a rock hurled into still water.

「世界に背を向けて……」歴史家はゆっくりとおうむ返しに言いながら、魔法使いをふり返った。「世界に背を向けてきた、だと!」喜怒哀楽というものがアスティヌスの冷ややかな声の表面を損なうことは稀であるが、今、静かな水に石が投げこまれたように、かれの精神の平静さを怒りが打ち砕いた。

“If I seem cold and unfeeling, it is because that is how I survive without losing my sanity!”

「わたしが冷淡で無情に見えるとすれば、それは、そうしなければ正気を失わずに生きてこられなかったからだ!」

Astinus’s eyes flared as he gazed upon the dying man. The words he hurled at him had been pent up inside the chronicler for countless centuries.

 アスティヌスは、ぎらぎらと燃える眼で、瀕死の若者を見おろした。アスティヌスの投げつけた言葉は、かれの内部に何世紀ものあいだ閉じこめられていたものだったのだ。

“I know who you are,” Raistlin murmured with his dying breath. “I know you now and I beseech you--come to my aid as you came to my aid in the Tower and in Silvanesti! Our bargain is struck! Save me, and you save yourself!”

「あなたが誰なのかわかった」レイストリンは末期の息とともにつぶやいた。「ようやくあなたがわかった。今こそ願う――ぼくの手助けに来てほしい、ウェイレスの<塔>やシルヴァネスティでぼくの手助けに来てくれたように!われわれの取り引きはまだ生きている!ぼくを救わねば、あなた自身も救えないはず!」


***

"beseech":格式語。願う、嘆願する。

 英文を読む時、極力辞書は引かないで、文脈で捉えてあとは流せ、と教わってきたんですが、こういう言葉は引かずにはいられません。格式張った言い回し、好きなんです。日本語の文章を書く時にも、イマジネーションが広がると思いませんか?

2015年1月2日金曜日

戦記5巻p89〜 二つの言葉

DRAGONS OF SPRING DAWNING p46

Tanis stared at them both, sick with horror. He couldn’t believe this! Not even of Raistlin! “Caramon, go ahead!”

戦記5巻 p89

 タニスは二人を見つめながら、恐怖で胸が悪くなった。こんな話は、とても信じられない!いくらレイストリンの話でも。「キャラモン、早くかかれ!」

“Don’t make him come near me, Tanis,” Raistlin said, his voice gentle, as if he read the half-elf’s thoughts. “I assure you, I am capable of this. What I have sought all my life is within my grasp. I will let nothing stop me.”

「かれをけしかけちゃいけない、タニス」レイストリンの声は、まるでタニスの考えをすっかり読んでいるように、優しい。「はっきり言っておこう――ぼくにはできるのだ。ぼくが生涯をかけて求めてきたものが、今や目前にあるのだから。何ものにも邪魔などさせない」

“Look at Caramon’s face, Tanis. He knows! I killed him once. I can do it again. Farewell, my brother.”

「キャラモンの顔を見てごらん、タニス。かれにもわかっているんだ!ぼくは一度かれを殺している。もう一度だってできるんだ。さようなら、兄さん」

***

"once"だから"again"できる。"gentle"なはずの声から血が滴っているように感じます。


Tika crouched beside Caramon, her fear of death lost in her concern for him. But Caramon wasn’t even aware of her presence. He stared out into the darkness, tears coursing down his face, his hands clenched into fists, repeating two words over and over in a silent litany.

 ティカはキャラモンのかたわらにうずくまり、かれへの心配で、自分の死の恐怖を忘れていた。しかし、キャラモンは彼女がいることに気づいてもいなかった。かれは闇の中を見つめたまま、とめどなく涙を流し、両手を握りしめ、二つの言葉を何度も何度も、お題目のように、無言で繰り返していた。

After all was gone, two words lingered like a benediction.

“My brother…”

 すべてが消え失せたあと、二つの言葉が、祝福の祈りのように、小さく漂い残っていた。

「さようなら、兄さん……」

***

 キャラモンが繰り返していた「二つの言葉」が何なのか、ずっとわからずにいました。
「さようなら、兄さん……」のどこが祝福の祈りのようなのかも不可解でした。

“My brother…”

 これだったんですね。
 レイストリンが放った最後の言葉。キャラモンが繰り返していた言葉。そうと明記されてはいませんが、原文を読んでそのように感じました。

 日本語訳は流れから言ったら「さようなら、兄さん……」なのかも知れませんが、これだとレイストの言葉にしかなりませんよね。キャラモンの言葉にも聞こえるような訳し方って………うう、無理だ。

 みんな文系英語究めて原文読もうじゃないか!いや無理ですか。という訳で今年も張り切って更新していきます!
 最低でも「伝説」コンプ!
 可能ならセカンド、サマフレ、ソウルズ完結まで!
 さすがに外伝は無理ですが。

2015年1月1日木曜日

戦記5巻p88〜 真相

 あけましておめでとうございます。今年もWoDをよろしくお願いします。

DRAGONS OF SPRING DAWNING p46

--Raistlin’s voice was calm--“or at least I thought it was Caramon.”

“As it turned out, it was an illusion created to teach me the depth of my hatred and jealousy.”

戦記5巻p88

――レイストリンの声は穏やかだった――「いや、少なくとも、ぼくはそれがキャラモンだと思っていた」
「あとでわかってみると、それはただの幻影で、ぼくに自分の憎悪感や嫉妬心の深さを学ばせるために作られたものだった」

“Thus they thought to purge my soul of darkness. What I truly learned was that I lacked self-control. Still, since it was not part of the true Test, my failure did not count against me--except with one person.”

「それによって、審問官たちは、ぼくの心に巣食う闇を浄化しようと考えたわけだ。しかし、ぼくが本当に学んだのは、自分に自制心が欠けているということだった。とはいえ、その試練は<大審問>の一部ではなかったため、ぼくの失敗は汚点とはみなされなかった――たった一人を除いてね」

***

 審問官たち、その筆頭たる大パー=サリアン。あなたは間違っていたと思います。人の心を遠慮なく暴き立てて、闇を、憎悪を、嫉妬を”purge”する?そんなの、腹をかっ捌いて臓器を切り取ろうとするようなものではないですか。それも麻酔もなしに。

 まだ竜槍病が再燃する前、あるゲームで、こんな事情で闇堕ちしてしまった魔術師が出てきたんです。 

「(ネタバレな事情により)
他人に殺されるくらいならと、ひと思いに俺が殺った……。

兄殺しの大罪を背負ったからには、どんなことでもできる!
どんな罪をも恐れず犯し、力を身につけて……
(ネタバレ)に復讐すると心に誓ったッ……!」

 想いはまったく異なるとは言え、即座にかれが想起されました。

 心の闇をpurgeするどころか、むしろそれこそが、レイストリンの心を闇路に押しやったのではありませんか?かの魔術師と同様に。そのことが、キャラモンよりもレイストリンをこそどれほど深く傷つけ、自分自身に絶望させたことか。

 黒エルフとの戦いで、心身ともに極限まで追いつめられていたレイストリンの真の力を引き出し、歩むべき道を見いださせたかったと本当に思っていたのなら、見せるべきはキャラモンの幻影ではなかった筈です。


 何か小さく、弱くて、惨めな存在が、強者に虐げられる様を見せれば良かったんです。


 読者様、どう思われますか?
 もしそうであったとしたら、レイストリンはどうしていたと思いますか?

 パー=サリアン、あなたはレイストリン・マジェーレという若者を見誤っていました。



“I watched him kill me!”
“They made me watch so that I would understand him!”

「おれは、こいつがおれを殺すのを見ていた!」
「審問官たちは、おれがこいつを理解するようにと、おれに見させたんだ!」

“I do understand!”
“I understood then! I’m sorry! Just don’t go without me, Raist! You’re so weak! You need me--“

“No longer, Caramon,” Raistlin whispered with a soft sigh. “I need you no longer!”

「おれは理解しているとも!」
「あのとき理解したんだ。しなけりゃよかった!だから、頼む、おれを置いて一人で行くな、レイスト!おまえはそんなに弱いのに。おまえにはおれが必要だ――」

「もうちがうよ、キャラモン」レイストリンがそっとため息まじりにささやいた。「ぼくにはもう兄さんは必要ないんだ!」

***

 伝説1巻の、ブープーがパー=サリアンに啖呵切るシーンで語ろうと思っていた話、我慢できずにここでぶちまけちゃいました。私にも自制心が欠けているようです。